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稲毛謙介インタビュー

昨年 12 月、トミタメソッドの OB 紹介として、 サウンドクリエイターの山口裕史氏を紹介 した。今回はその第二弾として、同じくサウンドクリエイターとして活躍中のトミタメソッド OB 、稲毛謙介氏にお話を伺った。

 

稲毛謙介氏

稲毛謙介氏は 2001 年の 4 月から冨田先生に指導を受けるようになり、山口裕史氏と同様に尚美学園大学芸術情報学部・音楽メディアコースで、 作編曲から音源モジュールを駆使した演奏、録音、立体音場構成を学んでいる。 2003 年からは MAX/MSP を使ったプログラミングにも着手し、 2005 年、株式会社コーエーに入社。現在は戦国無双シリーズを筆頭に、多くのヒット作品の音楽を手がけており 、 2007年 11 月 11 日発売の新作、「真・三國無双5」にもコンポーザーとして参加されている。

※なお、今回のインタビューには山口裕史氏もご同席されました!

(以下、敬称略)

■ 11月11日発売の新作「真・三國無双5」についてお聞かせ下さい。

真・三國無双5
「真・三國無双5」 オープニングムービーより

 

「真・三國無双5」 ゲーム画面
「真・三國無双5」 ゲーム画面

Q:2007年の11月、「真・三國無双5」が発売されましたが、どのような部分を担当されたのでしょうか?

稲毛: 今回は主に音楽の作曲とアレンジを担当しています。私は今まで「戦国無双」シリーズのチームメンバーとして音楽を担当していましたが、今回は趣向を変えてロックに挑戦してみました。テーマは「原点回帰」だったのですが、今までの雰囲気はもちろん踏襲しつつ、自分なりに新しいテイストを盛り込むことができたかなと思っています。

Q:制作している中で大変だったことは?

稲毛: なんといっても「真・ 三國無双と言えばハードロック!」が売りなので、ロック出身者や、ギタリストの方がどうしても向いてると思うんですよ。ところが、私はあまりギターが弾けるわけではないので、ちょっとずつ録っては切り張りしていくというような、地道な作業でDEMOを作っていきました・・・。科学の力は偉大ですね(笑)

Q:今回の一番の聞き所はどこでしょうか?

稲毛: やっぱりオープニングを聞いて欲しいですね。この曲はもはや「真・ 三國無双」には欠かせないMASA氏の名曲で、私も大好きな曲なんですけど、幸運にも今回アレンジを任せてもらえました。今までのテイストから一歩踏み出たところで、「ああ、稲毛がやるとこう変わるんだな」みたいなところを聞いて頂けたら嬉しいです。それから、さっきギターが弾けない故の苦労話をしましたが、その分リズムトラック等で遊んでみたりしました。科学の力を駆使して(笑)、できるだけ面白いことをしてやろうと頑張ったので、是非そこにも耳を傾けて頂きたいですね。

Q:サウンド制作にはどのような機材をお使いなのでしょうか?

稲毛: コーエーには、スタジオが1つと、サウンドルームという小さいブースが6つあって、普段はそこの中で作曲をしています。「真・三國無双5」では、ProToolsTDM上で、Native Instruments社のKONTAKT等の音源をならしながら、ギターをレコーディングして作曲をしていました。ドラム系はリズムループなどの素材を使って、ほとんどオーディオで作っていますね。また、最終的なギターのレコーディングの時はサウンドディレクターであるMASAの私物の「オレンジアンプ」を使って録音しています。いい音してますよ!

 


Q:作曲をする時に気を付けられている点はどんなところでしょうか?

稲毛: なんと言っても、どれだけプレイヤーをゲームの中へ引き込めるかですよね。当然「無双シリーズ」だったら戦闘がゲームの要ですから、戦闘曲は一番アツい曲じゃなきゃ盛り上がらないじゃないですか。逆にそこを引き立てる意味で、メニュー画面の曲は少し緊張感のある曲にしたりとか、うまくプレイヤーの気持ちを先導してあげられるような演出が一番大事かなと思います。

Q:ステージによって意識しているところなどは?

稲毛: 例えば「五丈原の戦い」では、諸葛亮と司馬懿の2大軍師が、お互いのすべてを懸けて戦う、壮絶な知略戦であると同時に、諸葛亮の最期という悲壮感も表現したかったので、シンセを使った淡々としたベースラインの上に、クライマックスへ向けて徐々に盛り上がって行く泣きのギターメロをのせてみました。逆に「赤壁の戦い」では、大火計を図ろうとする孫権軍と、これを阻止すべく全軍をあげて急行する曹操軍の、一刻を争うスリリングな情景を描くために、メロらしいメロはサビまで一切登場せず、リズムとリフでガンガン押し捲っています。 当然歴史を扱っているので、歴史的背景も曲の雰囲気作りには欠かせない要素ですね。

Q:全てをロックで表現するのはやはり難しいですか?

稲毛: 難しかったですね(笑)どうしても使える音色や音楽の方向性が限られているので、それで全てを表現するにはやっぱりコツが必要なんですね。 それから無双シリーズの場合、戦況の変化によって音楽が切り替わったりするんですよ。例えば、始めはそのステージ固有のBGMが再生されているのですが、途中でピンチな状況に陥ると、より緊迫感のある、専用のBGMに切り替わるわけです。途中からわざわざ切り替えるんですから、その曲のイントロ部分を聞いただけで、プレイヤーがピンチに陥っていることに気付いてもらわなきゃ意味がない。これが想像以上に難しかったです。

それから、「真・三國無双5」とは少し離れるのですが、以前私が担当した「戦国無双2 Empires」では、東北から九州まで、計6つの地方ごとに専用のBGMを用意しました。このタイトルでは「戦国無双」のアクション性と、「信長の野望」のシミュレーション的要素を一つにしたゲームプレイが売りでしたので、音楽も少し趣向を変えて、オーケストラを中心とした曲調になっています。ここでも、地方ごとに特色を出す為に色んな工夫をしましたね。例えば東北だったら雪が深々と降りしきる様子を、ピアノのアルペジオとディレイのかかった鈴の音で表現したり、近畿地方だったら雅楽器をふんだんに取り入れて雅さをだしたり。ちょっと変わったところでは、九州は火山のステージもあるので、民族楽器や唱名を入れて、プリミティブ(原始的)な雰囲気に仕上げてみました。

戦国無双2 Empires
「戦国無双2 Empires」 登場キャラクターイメージ

 

「戦国無双2 Empires」ゲーム画面
「戦国無双2 Empires」 ゲーム画面

Q:学生時代の経験が活きていることはありますか?

稲毛: もちろん!現場ですぐ要求に沿ったものを作れるというのは、冨田先生の「世の中に出て即仕事に結びつく作品を作ろう」という、そもそものコンセプトがあったから。それから、今のゲームサウンドはサラウンドが当たり前になってきましたから、学生時代に冨田先生に教わった新しいサラウンドサウンドの考え方は、今後新しい表現を模索していく意味では必ず活きてくるでしょうね。

山口: 同感。学生時代にそういう緊張した空気の中で過ごせた事で、自分の中の意識がすごく変わったと思う。簡単に言えば、根性ついた!ってとこかな。今はもっとついたと思うし、まだまだこの先つけて行かきゃと思うけど。冨田先生のレッスンは根性でついて行く!!

稲毛: それって結局一番でかいかも知れない(笑)やっぱり根性無いとやって行けませんから!それに、どんな仕事でも言えることですが、きちんと人とコミュニケーションをとれることってつくづく大事だなぁと思います。そういった意味では、学生時代冨田先生に、沢山の大学外部の人と触れ合う機会を与えて頂いたのは、本当に仕事で役立っていますよ。

山口: 話は変わるけど、稲毛は学生時代にMax/MSPもやっていたよね。オレは今になって興味が出てきてるんだけどなかなか時間なくって。仕事で何か活かせている事とかあれば聞かせてくれない?

稲毛: そうそう。実は仕事でもKONTAKTのスクリプト自分で書いて、アナログモデリングシンセ作ったり。意外とそういうとこが一番の強みだったりして。機械オタクですから(笑)

Q:作曲をする上でのポリシーなどをお聞かせ下さい

稲毛: まずは自分が純粋に「カッコいいじゃん!」て思える音楽を作ることですかね。自分が好きになれなかったら、きっと他の人にも気に入ってもらえませんから。そういう意味でも、「ここだけはこだわりたい!」という部分を必ず盛り込むようにしてます。時には大胆に、時にはひっそりと(笑)

山口: オレもほぼ同じ。どんな短い曲でも、ゲームをプレイしてくれた人に覚えてもらえるようにしたいと思ってる。 稲毛が言うように自分がカッコイイと思えなきゃ自信持って出せないから、時間が許す限り頑張っちゃうかな。 あと、他セクションの人に途中段階のものを聞いてもらったりすることもある。音の専門家でない分、一般的な意見が聞けるから、結構それでひらめいたりする事もあるよ。

■ 今後のゲーム音楽について考えていることをお聞かせ下さい

Q:ゲーム音楽のサラウンド化についてはどのようにお考えでしょうか?

山口: 原則的には、サラウンドなのはSEだけでいいと思ってる。BGMをサラウンドで使うとすれば、例えば、回想シーンでリアで鳴っていたBGMが、現実に戻る時に前に行くとか。そういう演出はあると思う。 楽器一つ一つがパンニングするようなものは、ゲームではかなり特殊かな。

稲毛: うん。勿論場合によっては有効だとは思うけど、効果的な方法を考え抜かないと難しいかも。オープニングムービーなんかだったら、きっと効果的ですよね。

野尻: ゲームにおける臨場感というのはスゴく重要だと思うので、 効果音をも音楽的に取り入れた表現ができるといいと思うけどね。 以前、様々な会社のゲーム音楽のサラウンドを聴く機会に恵まれたけど、 「目指せ!ハリウッドサウンド」という印象を受けて、 それをやっていいのかな?って思った。 何か、スゴく勿体無いなぁ・・・と。

山口: そういえば昔、某ゲームのオープニングで、機関銃の乱射シーンがあったんだけど、その機関銃の音がハイハットの役割を果たしていて、それがリアで鳴っていたのを聞いて、スゴイ!と思ったことがあったな。 僕たちがまず一番に考えないといけないのはゲームのことだし、ゲームの世界観から逸脱してしまうような音楽的効果は絶対ナシだけど、チャンスがあればチャレンジしてみたいなと思ってる。冨田サウンドのすごさを間近で聞いてきた人間だからね♪

稲毛: 逆に、ゲームにしか出来ないこと、リアルタイムだからこそ できることを追求していくのは面白いと思いますよ。 例えばマルチストリームを活用した音楽のリアルタイムな展開とか、 SEがそのまま音楽の一部になっていて、プレイヤーの動きに 合わせてどんどん音楽が発展していくとか。 ゲームはインタラクティブな作品なんだから、サウンド面でも どんどんそういうアプローチをしていくことで、映画やアニメとは ひと味違った独特の世界観が作っていけるんじゃないかな。

野尻: その差がきっと、ゲーム音楽の独自性とか、可能性なんだと思うな。 映画音楽よりも遥かに自由度があると思う。 お二方の今後の活躍に期待してますね!

 

インタビューアー/漢那 拓也

稲毛謙介(いなげけんすけ)

尚美学園大学音楽メディアコース在学中に、作編曲、シンセサイザープログラミング、サラウンド制作を冨田勲氏に師事。2005年に株式会社コーエー入社後、「戦国無双2 Empires」「戦国無双 猛将伝」「戦国無双KATANA」等、戦国無双シリーズのメインコンポーザーを務めるかたわら、「真・三國無双5」のサポートメンバーとしてBGM制作に参加。

 

山口裕史(やまぐちひろし)

尚美学園大学音楽メディアコース在学中に、作編曲、シンセサイザープログラミング、サラウンド制作を冨田 勲氏に師事。現在はプラチナゲームズ株式会社にて、新作のBGM制作に取り掛かっている。

http://www.platinumgames.co.jp/main/index.html

 

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